退職から起業まで

退職してから独立するまで、どのようなことをされていたのですか？

　次の就職先は決まっておらず、辞めた後は時間があったのでその間にバイクの免許を取りに行き、その後自分のバイクを買うためにバイク屋さんに行きました。
　そこでバイク屋さんの社長と仲良くなり、社長に何の仕事をしているのかと聞かれたので会社を辞めたことを伝えると、「今度新しく出店するから、よかったら明日から来てくれないか」と誘われたので「行きます」と答えました。
　だからバイクが好きでこの業界に入ったわけではないんです。ただトラックの整備士だったからバイクの整備もできるだろうと考えていましたが、それは全くの勘違いでした。

　バイク屋で働いてみると、昭和の時代でしたから、お客さんはたくさん来るし、修理もすごく入って、朝から晩まで食事も取れないくらい忙しくてテンテコ舞いでした。
　でも、お店がだんだん大きくなるにつれて、僕も仕事を覚えていきました。整備をやっていたからある程度応用は効いたし、喋りは得意だったから営業成績もよくて、働きはじめてから2年ぐらい経った時に、支店の店長になりました。

　ですが、店長になっても給料は上がらず、しかも社会保険や年金などは自営業の人みたいに給料を貰った中から自分で払っていかないといけなくて、25〜26歳の時にこのままでは駄目だと思い、独立することを決めました。
　それを当時の社長に伝えると「お前ならできるだろうから、新しい場所を探してやる」って言ってもらいました。でも新しい場所が見つからずにいつまで経っても独立できなくて、それをグチグチ思っていたら、社長に「自分でやるっていうんだったら辞めてしまえ」といわれて26歳の夏頃にクビになりました。

　クビになった後どうしようかなと思っていたら、店長時代に知り合ったメーカー(ヤマハ、スズキ、ホンダ等)の営業の方が、心配して家に電話をかけてくれて「もし店を開くならうちの会社の代理店でしてみないか？」と言ってくれたんです。
　最初はヤマハの専門店を出そうとしていましたがトラブルが起きてしまい、悩んでいたら仲の良いホンダの方が家まで来てくれて、「田谷さん、もし開業するんだったらウチが全面サポートしますよ」と言ってくれて、店の場所も探してくれたのです。

　でも、お店を立ち上げる資金がなくて銀行から800万円を借りることにしました。
　僕は工業高校しか出てないから経理や融資の申し込み方が全くわからなくて、自分で本を買って読んで勉強して、事業計画書も書いて銀行を何社かまわったのですが、みんな却下されてしまいました。

　資金は借りられていないのにお店のオープン日は決まっていき、困っていたらある銀行の担当者が親身になってくれて、その方に「この事業計画は粗利が出てないから良くない。売上は良いけど粗利がなかったらあなたが生活出来ないでしょ？」と言われました。
　事業を始める前でどうなるか分からないから書けないと答えたら「事業を始める前でも利益を書かないと、銀行員は何を信用するんですか」と言われて、その通りだと思って利益を出すように事業計画書を書き直して銀行に持って行ったら、ようやく前に進み始めました。

　また、融資を受けるためには誰かに保証人になってもらわないといけなくて、それで元のバイク屋さんの社長に頭下げに行きましたが、最初は断られました。でもそのときに社長の奥さんが、「そんなこと言わず手伝ってあげんさい」と言ってくれて、社長に保証人になってもらい、銀行から800万円借りて、27歳の誕生日に1人で店を立ち上げることができました。