生い立ちからの進路決定

会社の概要を教えてください。

　オートバイの販売店です。元々は35年前にホンダの専門店から始めたのですが、今は中古をメインに取り扱っています。ホンダ、ヤマハ、スズキの正規代理店で、あとはオートバイの修理や保険業務をしています。また4,5年前からオートバイの個人買い取り、レンタバイク、アシスタントサイクルなどの事業もしています。

田谷様は地元の工業高校のご出身だとお伺いしたのですが、いつからこのオートバイに関わるお仕事を志しましたか？

　僕は片親で、母子家庭だったので裕福ではありませんでした。高校に進む時に普通科に行ったら卒業後は大学に進学しなきゃいけないので、親に迷惑をかけてしまうと思い、就職をメインに考えて工業科の高校に進学しました。
　勉強は好きではなかったですが、工業も別にやりたいわけではありませんでした。

　その頃の工業高校の生徒は企業にもてはやされていて、卒業後は今でいうJRや中電やNTTなど、みんな良い所に就職できていました。
　でも、たまたま僕らが就職するタイミングでオイルショックが起こり、就職先がなくなったのです。同級生の中には就職浪人する人も何人かいました。

　その時に僕は勉強が少しできたので、就職課の先生にある会社に行けと言われました。
　紹介された会社は一流会社で、当時新卒募集はしていませんでしたが、先生と繋がりがあり雇ってもらうことができました。
　暗い工場で作業しなきゃいけないイメージがあったので、はっきり言って行きたくはなかったのですが、一流会社だったので先生に言われた通りに就職しました。
　しかし、就職して一ヶ月間研修したら、自動車の販売会社に異動させられ、そこでトラックや乗用車の整備をするよう命じられました。

　その時に辞めようかなと思いましたが、それでも少しはやってみようと思い働きました。
　しかしすごく辛い仕事で、工場で夏は暑い、冬は寒い、雨には濡れる、音はひどいし、衛生的にもあまりよくなくて、排気ガスとかが当たり前に舞っている環境でした。
　それで最初は辛かったんですけど、そのうち楽しくなって最終的には４年間その仕事を続けました。

　会社を辞めようと思い立ったのは、同じ高校を出られた10歳くらい上の先輩に給料明細を見せられた時でした。その先輩は30歳手前で結婚されてて、明細を見てみると僕の給料と1万～2万円くらいしか違わなかったんです。

　10年会社に勤めて2万円くらいしか変わらないのは嫌だと感じて会社を辞めようと思いましたが、その後のアテがあるわけでもなかったので、会社に居るうちに免許だけは取っておこうと思いました。
　大型トラックの免許や、ガス溶接や電気溶接やクレーンの玉掛けなどの資格を取り、最後に2級自動車整備士の資格試験に受かった瞬間に、上司に辞めることを伝えました。
　そうしたら上司に「辞める前に朝礼でみんなに挨拶しろ」と言われたので、みんなの前で「学校の先生に言われてこの会社に入り、みんなとコミュニケーションが取れてありがたいと思っているけど、今からの僕の人生は自分で決めてやります。」と言いました。そのことは今でも覚えています。
　そうして22歳で退職しました。