目標を口に出すことの大切さ

今、起業を考えている学生は時代的に難しいですか？

　そんなことないですよ。僕が起業したときも不況でした。現在は土地も高騰してるし、株価も戦後最高値ぐらいになっています。実際、中小零細企業にはコロナで倒産していないところも多いです。だから、現状認識をニュースによって惑わされてはいけません。

　それと起業したいなら、自分がどうなりたいかということを常に心に持つことです。
　アバウトでもいい、学歴がなくてもいいし、何もなくてもこうなりたいという想いの強い人が人として特化できるんですよ。
　自分の現状を見て、今はこうだけども何年先にはこうなりたい、ここまで達成したいっていうビジョンとイメージを持つことが大切です。

　それを僕は昔から持ってたんです。先輩の給料明細を見たときに社長になろうと思いました。
　なんの社長だって良かったんですけど、人に上からものを言われて給料をもらう立場より、こっちから給料を出す立場になりたいと、アバウトだけどそれは強く思っていました。

　会社に関してもある程度先を見て、それを時間軸で考えて1年先、2年先、3年先にはこうなりたいと決めています。3ヶ年計画とかは大手企業なら絶対作っていますし、中小零細企業でもできる所は作っています。計画が達成できるか先のことは分からないけど、これを書かなければどうにもならない。自分の人生でも同じですよ。

先ほど起業に至るまでのお話をお伺いしましたが、その中でターニングポイントを上げるとしたらどこですか？

　ある社長さんにお会いしたことです。
　同じ業界のものすごい大きな会社の社長さんなんだけど、その社長はたくさん拠点を出して色んなことに挑戦していたんです。でも周りの人間がやっかんで「あいつはあんなことしよる」って悪口を言ってたんです。

　だけどその人のお店は従業員もニコニコして働いてるし、給料もたくさん出てるという噂だったから、不思議だなと思って話してみたいと思いました。
　だから、ある取引先の営業員を通して、その社長さんに会いに行きました。
　そこで経営の考え方や社員のことなどを教えてもらったり、異業種交流会にも連れていかれて色々な社長の方に会ってお話を聞いたんです。
　40歳くらいだったからすごく刺激になって、井の中の蛙だったと思って考え方を変えて色んなことをするようになりました。

　そしてある時、僕は店でバイクの修理をしていました。それを見たその社長に「なんでお前が修理してるんだ。修理してる時間がいくらになる。社長が修理しちゃ駄目だ」と言われました。その通りだと思って、そこから僕は修理することを辞めました。
　ここがターニングポイントです。それがなかったら相変わらず店で修理をするバイク屋のおじさんだったと思います。

今後の野望はありますか？

　先ほど申し上げたように、バイク業界が全く無くなることはないでしょうが、すべてが生き残ることは無理だと思います。
　広島県で言ったら現在百数店舗あるのが10店舗ぐらいしか残らなくなると思っています。
　でもその10店舗に残ってしまえばある程度はやっていけるのは見えているので、残るためにはどうしたらいいかを考えると、今の形態は変えるべきだと思っています。

最後に若者に向けてメッセージをお願いします。

　夢を見るのは実にいいことなんだけど、自分がこうなり〝たい〟が少ないですね。〝たい〟がないと先に進みません。

　人からの指示を言われるのを待ってるというのは、僕はダメだと思います。
　例えば、自分はこういう会社に入りたいでもいいし、こういう事業がしたいとかの意志があったら、自然と勉強するようになるし、自然とそういう人たちに会いに行って話を聞くはずです。
　僕は成功した人に話を聞くのが一番良いと思いますし、そのために人に頭下げたりすることは何とも思いません。しかし多くの人はプライドが高くてそれが出来てないですね。

　それとやりたいことを口に出してないですね。
　有言実行という言葉がありますが、言ってしまうと自分でやらないといけないから言わないし、言ってないから失敗しても逃げられると思ってる、そういう人間が僕は大嫌いです。
　やりたいことがあるなら口に出していくべきです。でも、言ったことは実行しないとね。

インタビュアーより

やりたいことがあるなら口に出し、目標を立てていく。自分から成功者に会い、話を聞きにいく。
私の夢は何かと聞かれたら即座に答えられる自信があります。それは幼い頃に掲げた将来設計があり、今はその通りに勉強しつつ大学生活を送っています。
しかし、それは自分だけで完結することであり、人からアドバイスをもらうようなことはしていなかったことに気づきました。
そして今インタビュアーとして田谷様や他の社長の方々からお話を伺える立場にいることに自分は恵まれていることを感じ感謝し、これからは積極的に目指している業界におられる方々を訪問し、お話を聞いて吸収していきたいと思います。

田谷様、今回は貴重なお時間をいただきありがとうございました。

森脇姫花